目標設定の考え方(人事評価シリーズ31)
2019年08月25日
「目標を立てることができない」という相談を受けた経験のある管理者は多いと思います。私も目標管理の研修でよく受けるご相談です。
役職についていないベテランスタッフが「一通り仕事はできるし、今さら新しいことを目指して頑張ってと言われても…」と言って、目標設定に消極的で困っているという相談です。
一方で、やみくもに「目標設定の時期だから、目標を書いて提出してください」と言われても、何を基準に設定してよいのかという言い分もあると思います。
目標を立てるときの考え方を伝えることで、それは解消できるかもしれません。
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目標を立てるとき、2つの考え方があります。
1つ目は、スタッフへの期待値に対して、現状と比較して、そのギャップを埋め合わせるために何をするのかが目標になるという考え方です。つまり、「発展型・成長型の目標の立て方」です。
「そろそろリーダーの仕事ができるようになってほしいので、今期はリーダーの業務を少し手伝ってほしいので、リーダーの補助的な仕事を目標にしてみてはいかがですか」というようなイメージです。
スタッフのスキルや経験から今の立ち位置(資格等級やラダーレベル)からどこまで成長してほしいのか、発展してほしいのかを示して、そのために何を経験して、どのようなスキルを身につけることを期待しているのかを伝えることで目標(具体的な行動計画)を立ててもらうという考え方です。
ポイントは、スタッフへの「期待値」を明確に示すことです。
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2つ目は、今起こっている問題、課題を解決するその解決策が目標になるという考え方です。「課題解決型の目標の立て方」です。
仕事で全く問題がないということはまずないと思います。何がしかの問題を解決することはどのスタッフにも求められる役割です。
ただ、問題にも種類があります。①事実上の問題、②システム上(仕組み)の問題、③作業上の問題です。
①事実上の問題とは、「これが解決しないと何もはじめられない」という問題です。次のようなことです。
○人手・人材がいない、足りない
○設備・備品がない、整っていない
○予算がない などです。
これは、経営者や上層部の人たちが解決する問題で、スタッフレベルが解決できる問題ではないので、スタッフの目標にはなりえません。
②システム上(仕組み)の問題とは、「決まりごとがないため、進めるのに判断ができない」という問題です。次のようなことです。
○システム(仕組み)がない
○コミュニケーションがとれていない
○制度が整っていない
○業務手順の効率が悪い、手順が定まっていない などです。
これは、現場管理者が解決する問題です。スタッフレベルの目標にするならば、補助的な作業をスタッフに分担することで目標として設定できるものです。
また、ベテランスタッフの場合、仕事をよくわかっているので、問題の内容によっては単独で目標設定できることもあるかもしれません。
③作業上の問題とは、「進め方を随時確認しておかないと障害、損失がどんどん膨らむ」という問題です。次のようなことです。
○壊れてしまった
○間違えてしまった
○進め方が正しくない
○なくなってしまった などです。
これは、日常的な仕事の手順が決まっているのに、間違えるということから、スタッフのスキル、理解度等が問題として発生しているので、スタッフが解決できるレベルの問題であり、目標設定が可能な問題です。
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1つ目の目標設定の考え方は、どちらかというと向上心があり、行動がとれるスタッフに対して示したほうがよいかもしれません。すべてのスタッフがいつも向上心があるとは限りません。頑張りたくても、家庭の事情があって頑張れないときもあります。体調不良が続いていれば、向上心があっても行動を伴うことができないこともあります。そのようなスタッフには、2つ目の目標設定の考え方で目標を探してもらうとよいでしょう。
「目標」というと、向上する、成長する、発展するイメージが強いのですが、実は今ある問題を解決することも目標となりうること、一つの考え方として取り入れてみてはいかがですか。