個人目標の点検ポイント①~目標レベルの判断基準(人事評価シリーズ34)
2019年12月25日
スタッフから個人目標シートが提出されたとき、「果たして、記入されている目標はスタッフのレベルに見合った目標なのか」と判断に迷う管理者がほとんどだと思います。「レベルに見合っているのか」は、「立ち位置」に対して見合っているのかということだと思います。
そもそも目標とは、自分の立ち位置に対して、ちょっと背伸びして頑張った結果、新たなことが身についた、新たな経験を得ることができた、目の前にある課題を解決したなど、ある程度の困難が伴うものです。そうなると、今のスキルや経験で、スタッフ自身が軽々とできることは目標とは言い難いということになります。
となると、目標は、①現状の把握(問題)、②期待値の確認、③①と②のギャップの埋め合わせの手順で設定します。①現状の把握(問題)をするとき、管理者は、ⅰ)現状の立ち位置とⅱ)期待する立ち位置を定めることが重要です。
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立ち位置の判断基準になるものとして、次のことが挙げられます。
①年齢
②在職年数
③保有資格
④役職
⑤職務経験(現行職種での職務経験、社会人経験)
⑥知識・技術などスキル
⑦過去の目標設定状況、評価結果状況
①~④までは、スタッフの属性になりますので、可視化されていて明確な立ち位置や役割ですので、「ものさし」としてはメモリがハッキリしています。しかし、⑤の職務経験はこれまでの経験といっても、過去の仕事の仕方を見たわけではないので測定不能、⑥のスキルはまさに仕事をやってみて身についているかが判断できることではありますが、判断する人が違うと異なる結果になることも多々あります。⑦の評価も人が評価したことですから、人によって評価基準が全く同じとも言えません。
人事評価と同様に、目標のレベル評価は⑤~⑦の要素がそれを難しくしていることを理解した上で、⑤~⑦の判断基準をできるだけスタッフに明示できることが大切です。
例えば、人事制度を導入しているのであれば「等級定義」がそれに相当します。ラダーも同様です。
【等級定義の例示】
また、これだけでは一般用語の羅列になってしまい、解釈するのが難しいこともありますので、事例を示すことも必要です。
【等級定義に合わせたレベルの違い】
事例で示すとおり、医療・福祉の現場において、目標のレベルの違いは、同じ仕事でも「習熟度の違い」で設定することが「質の高まり」につながるのだと思います。「クレーム対応」でも、クレーム内容の困難度によって対応の深まりが求められます。あらゆるクレームに柔軟に対応できるようになるためには、それなりの経験、テクニック、スキルが必要になりますから、その深まりを設定することが目標のレベルになるわけです。
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目標レベルの判断は、「これが確実に正しい」ということは言い切れませんが、判断基準である等級定義やラダーを示すことによって、スタッフ自身が自分の立ち位置を認識して、目標だけではなく日常の仕事も相応のレベルの仕事をしてもらうことを示すことにもなります。
スタッフのレベルに見合った目標を立てることを目的にするのではなく、立ち位置を理解、認識して普段の仕事に臨んでもらうということも期待できることですので、目標設定時には毎年示すことをしていただきたいと考えます。
プロの仕事
2019年12月20日
2019年もあと10日となりました。
皆様にとってどんな一年でしたでしょうか。
今日は先日、保育園での研修でふと思ったことを書いてみました。研修テーマは、「保育園の役割とサービス」でした。
医療・福祉業界は産業分類ですと「サービス業」に分類されています。
飲食業や販売業と同じ「サービス業」です。少し違和感を感じるかもしれませんが、医療・福祉でのサービスという視点で研修をしました。
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今や病院も介護施設も保育園も「選ばれる」という時代に突入しています。日本の人口構造からすると多すぎる、もしくは近い将来多すぎることが予測されているということですね。
病院は「地域医療構想」という取り組みから、「そんなに簡単に大きな病院にかかるのではなく、近くの安くすむクリニックに通って下さい」と言わんばかりに大きな病院の病床数を減らして下さいと国からの指導、介護施設(高齢福祉)は人員不足による職員の取り合い、保育園は現段階では待機児童対策を推進しているものの、地方では定員に到達していない保育園も多々あるという現実。いずれにしても、何らかの要因で「競争」が始まっているのです。
そして、どの分野でも共通しているのは国家資格を保有している専門職集団の業界であり、人が歳を重ねる上で必要な、ある意味「インフラ」のようなものだと思います。
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しかし、医療は別ではありますが、介護は核家族化が進み、同居できていない高齢者介護をどうするのか、本当は自宅で親の世話ができればいいけれど、自分も働いて生計を成り立たせなければいけないということから、プロが必要となり、「介護」という仕事、職業として成り立ってきました。保育は、生計を成り立たせるためには、両親共々働きたいということから、家での子育てではなく、それに代行できるプロとして保育があります。
介護も保育も、かつては家族で協力してやってきた生活の一つでしたが、それが職業になっているということ、国家資格であるということは、「プロ」であって、自宅でやっていることとは違うのだという認識が必要だと思うのです。
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保育でいうと、「子育て」と「保育」の違いは何でしょうか。
私の中では、まだ勉強不足で答えが出ていません。これから整理していきたいと思っています。
保護者が仕事に行くから、その間「預かってあげている」というのが保育園はプロではないと私は思います。
保護者が仕事に行っている時間に子どもたちが成長できるタイミングを逃さずに発達段階に合わせたたくさんの経験をさせてあげよう!がプロの仕事なのではないかなぁと・・・。
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「プロの仕事」。素人との違いを考える機会になりました。私にとっても人事のプロとして考え直す機会でした。
「やる気」だけ求めることなのか
2019年12月05日
久しぶりのブログです。
2019年もあと1ヶ月をきりました。温暖化とかいろいろ言われている中で、今年はほとんど秋がなく、夏から冬になった印象の年。今に留まらず、地球の気候変動はこれからますます大きく動くかもしれませんね。
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ところで、前振りからは全く関係なく、最近ふと思ったことがありました。
「やる気をもって働いてもらいたい」という病院・福祉施設の経営者・管理職側の期待は、すべてのスタッフにもとめることなのか。そして、「やる気」を持った上で何をしてほしいのか。
です。
そもそも人は毎日やる気をもって過ごしているのでしょうか。
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もともとやる気のある「考え方」をもっている人は、自分で自分のモチベーションを管理できていると思います。自分がやる気があるときとやる気のないときの内部環境と外部環境を把握できていて、やる気がなくなったときにその対応も自分で作れる人です。
となると、普通に仕事をしてもらっているスタッフに「やる気」を求めるというよりも、今日やってほしいことをちゃんと終わらせること、そして、明日嫌な気持ちもなく普通に出勤して仕事をしてもらうこと。まずはそこができているのかが大切なのではないかと思うのです。
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とはいえ一方で、病院・クリニックの運営を考えると、淡々と日々の仕事を普通にこなすスタッフばかりでも困ります。やる気のあるときには積極的に意見を言ってもらったり、率先して自分から動いたり、提案したりという行動や態度もほしいものです。
では、そのような行動や態度を引き出すためにはどうしたらよいのかです。
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例えば、「意見や提案をほしい」というと、「そんな…私に意見を求められてもなぁ…」と思うスタッフは結構いると思います。おそらく、「やる気の強要」のように感じているのかもしれません。どちらかというと、管理職側がスタッフに求める言い方になります。
一方、「おかしいと思うことがあったら言ってもらえますか」とか、「やりづらいことがあれば言ってもらえますか」となるとどうでしょうか。主体はスタッフとなり、求める側がスタッフになります。今をよりよく変えたい(改善提案)のであれば、こういう訊き方もありかもしれません。
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要は「やる気があるか」ではなく、「やる気をもったときにプラスの行動や態度、考えを表してほしい」ということを求めているのだと思います。
そうなると、管理職側が声のかけ方を変えてみるとよいのではないかと思うのです。
やる気を持ってほしい…ではなく、やる気をもってどんな行動を起こしてほしいのかまで考えることが必要なのではないでしょうか。
活動報告12—クリニックに人事評価は必要か?!「人材育成に結び付ける評価制度の動かし方」で登壇 in 金沢
2019年12月02日
去る12月1日(日)、金沢に本社をおく(株)ファイネス様にて、“クリニックに人事評価は必要か?!「人材育成に結び付ける評価制度の動かし方」”をテーマにしたセミナーを開催いたしました。
本セミナーは(株)ファイネスのコンパスが企画主催し、弊社エイトドアが講師として登壇いたしました。
人事評価制度の導入や運用に関心があるクリニックの院長、事務長を中心にたくさんの方々がご参加くださいました。
セミナーでは、人事評価はリスク管理の一つであることや具体的な活用ポイント、制度設計する際に気をつけたいことなど、非常に濃い内容でお届けしました。
ご参加された方々からは、
「評価を導入しようと思っていましたが、導入までのステップがあることを知りました」「評価方法の筋道が立ちました」「同じテーマでセミナーがあれば、次回も参加したい」といった声をいただき、反響の大きさを感じております。
今後も、北陸地区において様々なテーマでセミナーを開催予定です。ご希望に合わせて内容をアレンジすることも出来ますので、ご興味のある場合はお気軽にお問い合わせください。